年が明けた。明けただけで、今日が昨日になり、明日が今日になり......という繰り返しの一部にすぎないのだ、とかっこつけてみるのは、どうも幼い頃から年末年始の足場が数センチ浮いたような雰囲気が好きではないからだ。コロナ禍のおかげで、親戚同士が集…
2時間59分。映画を見る前ではたじろいてしまいそうな長尺(ちなみに劇場に足を運んで見た映画で最も長かったのはエドワード・ヤンの『クーリンチェ少年殺人事件』で約4時間)。普段ならただでさえ集中力のない私にとっては、間断なく集中力を維持するのがか…
大方のフィクションの主題には「逃げる」があると思います。巨大な組織から差し向けられた刺客からの逃走、家庭内暴力で壊れた家庭からの逃亡、さえない現実からの逃避……。私は「逃げる」ことには肯定的ですし、昨今は「逃げる」ことに対してポジティブな意…
カラスが拳大ほどの石を器用にくちばしでつまみ、瓦屋根に運んでいく。すると、登った屋根から地面に転がし落とした。思わず感心してしまう。また意志を別の屋根に運んでいく。また落とすのかと思いきや、石を猛烈な勢いでつつき始めた。どうやら石を木の実…
(noteがアレな感じなのでこちらに移植してきました......まるまる同じ文章です) 劇中で高橋一生が撮影した自主製作映画でフィルムの淡い輪郭と共に浮かび上がる夢見心地な蒼井優の白い顔。銃の硝煙。床に落ちた懐中電灯の白い光。知らぬ間に動かされたチェス…
https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/2443/2225660/index.html より(© 2019 NHK) 昨年は一時期フィクションをまったく受けつけずドキュメンタリーばかり見た時期があり、それ以降も年中面白そうなのがあれば録画して見ることが多かった。その中でもこの…
第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編 とにかく観て.......ただそれだけ 元旦、することがなく、暇を持て余し、最初はスター・ウォーズでも見ようとシネコンに入ると、ちょうど特別上映がやっていた。ので、「ラッキーじゃん…
「あなた」と「わたし」でひとつにはなれない kuro-matsu2023.hatenadiary.jp (星野源『アイデア』についての稿で書き損じてたところを補う形での追記のような文章になります) ひとりの集合体で集団や組織は形成される。どんなに結束力の強い手段でも、顔も…
「おはよう」と「さよなら」、そして日常はつづく 「ラテン文化*1の流れそのものが、レンゲの花のようなもので、私にわかりますのは日本的情緒―たとえばスミレの花のようなものだけなのです」と岡は言う。 レンゲとスミレの優劣を云々するのではない。レンゲ…
自分を大事に思ってくれる人を、簡単に手放しちゃいけない。 みくびったり、おとしめたりしちゃいけない。 そうしないと愛していい人が誰もいない人生になる。 梅田のグランフロント大阪で本を立ち読み(は体質的にできないので、正しくはただ本を眺めて、な…
「十年経ったけど、原爆を落とした人はわたしを見て『やった!またひとり殺せた』とちゃんと思うてくれとる?ひどいなあ。てっきりわたしは、死なずにすんだ人かと思ったのに」
クリス・プラットとジェレミー・レナーとデンゼル・ワシントンは、現代アメリカ3大父性ムンムン俳優
日本に帰ってしばらく経ち、前より決まっていた療養をしている。まあ、療養といっても、仕事と並行して、カウンセリングにちょこまか顔を出すぐらいのことなのだが。まあなんというか気楽な身分なもんだなあ、と久しぶりの田舎の暮らしでそれなりに落ち着い…
わからん………てんで、わからんけど、なんか分かるぞ………と、どうでもいいトラウマまで呼び覚まされた名シーン <前回> kuro-matsu2023.hatenadiary.jp 以前カウンセリングを受けたとき、項目の中に「あなたはよくひとりごとをしゃべりますか?」とあったので…
この手の煽り文句を口にするのは、恥ずかしさすらあるのだが、でも言わせてほしい…………「この映画を見て、涙腺が壊れない、そんな血も涙もない人間、この世界にいるんですか?」と。 何度見ても激烈に「オモシロイ!」と思える映画、というのはそうそうありま…
不定形の愛について語るための、優秀な語り部である「水」 水には形がありません。定まった形はありませんから、環境によって、変化します。円錐の容器に入れれば円錐に、地面に散らせばそのまま真横へ広がり続けます。熱を加えられれば蒸気となり、冷やせば…
正直本稿だけで自分のハイローへの愛憎(ラブが8割ですよ)をいつか『HiGH&LOWとオタクと私』というクソタイトルでブチ撒けたいのですが、とりあえず、一旦の区切りである『最終章』を見た感想をメインに書いてみることにします。 以下、不満・苦情をつらつ…
ハッタリが勝つ正義 いいですね。こういういい加減で、よくできた映画は。飽きがくることがありません。マカロニウェスタンというのもいいです。 1858年。南北戦争の始まる3年ほど前ですね。黒人奴隷のジャンゴ(ジェイミー・フォックス)と歯科医の賞金稼ぎ…
『家族になろうよ』てのがありましたが、そうカンタンになれるもんじゃありませんわな 家族を家族たらしめているものは何か、というと、これまた大きく書きだしてしまった気がしてしまうのだが、やはりそれは血のつながりではなく、「共有している時間」の濃…
ネタバレたぁなんじゃあ…………ここはブログじゃき、何を書いてもええんじゃ!!(ごめんなさい反省してます)
食べものをお粗末にしてはいけません
僕がいる街は、大都市とはいえなくとも、程よく自然(厳密に定義された「自然」とはまた異なる)があり、そこそこに観光でにぎわっていたり、清潔な住宅街があったり、大学があったり、物騒な情勢にしては治安も良い。しかし、もちろん、社会というものがある…
人間というヤツの性質は、どうやらそう変わることはないらしい。よく「歳を取ると頑固になる」なんてのを聞くが、そんなことはないなずなのだ。今現在、口から唾を飛ばしながら、どうでもいいことにイチャモンをつけているような老人は、決して痴呆のせいで…
もう既に各所で「Netflixなら○○がオススメ!」というのを見かけまくって、ウンザリしておられる方も、きっと多いことでしょうが(自分もわざわざそんなものは見ないし)、とはいえ、普段の会話で、比較的ストリーミングサービスに馴染みのない方から、「ヘイ、…
「デビルマン」を信じることはできませんか? 永井豪という漫画家で、最初に頭に浮かぶ作品といえばなんだろう。男子のスケベ心を鷲掴みにした『キューティーハニー』だろうか。それともフィギュアで遊んだ方も多い『マジンガーZ』だろうか。しかし、それ以…
さよならなんて云えないよ 出会いがあれば、別れがある。日が昇り続ける限り、自明なことであり、言葉にするのも陳腐だ。 もっと陳腐で、奥ゆかしいことに定評のある日本人ならば、口にするのも困難な言葉がある。それは「アイ・ラヴ・ユー」と「グッド・バ…
『カルテット』で、坂元裕二は夫婦のことを「別れることができる他人」だと、松たか子に語らせていたが、兄弟(便宜上、兄と弟と書いただけで、兄と妹でも、姉と弟でも構わない)ならば、彼は何と喩えるのだろうか。 人が生まれてから、一番最初に属するコミ…
それはただの現実逃避なのかもしれない。 でも、少なくとも、孤高と共働が一緒にある世界を目指しながら、怪物と対峙して、「彼ら」と共に冒険することで、失った青春を、屍のままの過去の肉体を、たとえ疑似的にでも、再生することができるなら、それは「救…
あなたと歩む世界は 息をのむほど美しいんだ 人寄せぬ荒野の真ん中 私の手の中を握り返したあなた あなた以外思い残さない 大概の問題は取るに足らない 多くは望まない 神様お願い 代り映えしない明日をください 宇多田ヒカル『あなた』の歌詞から思い起こし…
事の始まりは、『欅って書けない』内のフィーリングカップル(途中、ハライチ澤部さんがねるとんネタをやっても、土田さんが拾うまでメンバーがポカンとするのが可笑しかった)なる、女の子と女の子のイチャイチャが見たい若干変態的な趣向を持ったオタクか…