ふしぎなwitchcraft

評論はしないです。雑談。与太話。たびたび脱線するごくごく個人的なこと。

中茎強・久保茂昭 『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』

正直本稿だけで自分のハイローへの愛憎(ラブが8割ですよ)をいつか『HiGH&LOWとオタクと私』というクソタイトルでブチ撒けたいのですが、とりあえず、一旦の区切りである『最終章』を見た感想をメインに書いてみることにします。

以下、不満・苦情をつらつら書き立てますが、愛が9割なんです。

f:id:kuro_matsu2023:20180701012541p:plain

ちょうど日本を発つころに公開されていた本作。泣く泣く観賞を諦めていたのですが、ようやくDVDで見ることができました。しかし、時間が経つと、おそろしいのは、自分の理想ばかりが(『勝手にふるえてろ』のヨシカちゃんのように)膨らんでしまうところ。ああであってほしい、という願いばかりがブクブク太るばかり。では、長らくお預けを食らった『HiGH&LOW THE MOVIE3 / FINAL MISSION』、蓋を開けると、どうだったかといえば、正直これがまた釈然としない何かがずっとモヤモヤッと残ってしまったのが率直な感想。

まず、チキンなので、以下のような熱中ぶりを見せていたことから、いかに私がこのシリーズに熱を上げていたかお分かりいただけると思います。決して、フッと湧いて出たアンチではないことを、きちんと示しておきたい。いや、何も有効な証拠能力も持たないのであるが。一応。

 

 (佐野岳の出演や公害的なニュアンスなど、今思えば、あながち外れていない予想までしていた…………どうかしちまってた時期)

f:id:kuro_matsu2023:20180704131740p:plain

そもそもこのシリーズの「うまみ」って一体…………

ということで、本稿で、詳しくハイローシリーズへの思いを書き綴ることは避けておくとし、自分が(みなさんがどうかはワタシには知り得ませんので、あくまで一個人の感想)ハイローの何に強烈に惹かれていったかを、簡潔にまとめますと、

 

①もはやマジョリティであるオタクが分け隔てなく楽しめるサブカルチャー全体へのピュアで愚直なオマージュと、ネット文脈との親和性が極めて高い二次創作精神。

 

②記号化されたキャラクタたちが一本の作品ではありえないような情報量でひしめき合うことで発散される熱量。(潤沢な資金と)それら「記号」で構成される、徹底的にジャンクでカラフルなユニバース的世界観。

 

③普通にやれば、一部のコアなファンにしか見向きされないような粗雑さ(ジャンクさ)とは裏腹に、作品として指向性が高く、密度の濃い、確かなダンス的身体能力で培われた最先端と読んで差し支えないアクションと、それを撮影するカメラ。及びに、「若者」たちが放つ、瑞々しい肉体性(なぜ若者をカッコ書きしたかといえば、ご存知の通り、一部の役者自体は特に若くもないからである)。

 

という大きく分けたこの3つあたりではないでしょうか。他には、まるでMVのような水準の高いクラブシーンや、作品を盛り上げる音楽の中毒性などもあります。画面の端のモブキャラまで、世界観の構築に参加していて、画としてスキがないんですね。とにかく、誰でも(かつて私が抱いていたようなEXILE的なモノへのある種の毛嫌いさえ乗り越えれば)楽しむことのできる、開かれた門戸に、所謂「オタク」という人種に含まれる方々もガツンとのめり込んでいったことでしょう。

 

なので、決して大手アイドルグループに依存しきっているワケではなく、むしろ、そのグループのファンの方々のお金でこんなにもフェティッシュで、映画として志が高いクオリティが作られている、という贅沢を享受できることに、申し訳なさすら感じるほどなのです。

 

じゃあ、本題に入りますね

 

さて、では、この志の高い試みの最終章が完全燃焼だったかといえば、必ずしもそうではなく、なんともモヤモヤする終わり方でした。一応の話の落としどころはつけてくれているのですが、志の高いシリーズだけに残念さが目立つ印象を受けました。散々広げに広げた風呂敷ですので、今更これを全部回収するなんて無理な話だろうとは思っていましたが、それでもやはりしこりが残る、そんなところです。

 

まず、ザッとこれまでのドラマから前作『HiGH&LOW THE MOVIE 2 / END OF SKY (以下『2』と省略します)』までの成り行きを簡単におさらい(立木文彦の声で脳内再生していただくとより一層の臨場感が)すると、

 

AKIRA井浦新というやたらに腕っぷしが立つバイク乗りの兄ちゃんが、MUGENというなんだかすごそうなチームを作り、雨宮兄弟という彫刻みたいな男前となんか色々ある

・九龍というヤクザグループがカジノ計画のためにSWORD地区の乗っ取りをもくろむ

・SWORD地区でにらみ合う勢力(山王街二代目喧嘩屋を名乗るMUGENの後継組織《山王連合会》、クラブを経営する『時計仕掛けのオレンジ』をモロにオマージュした衣装に身を包む《White Rascals》、ヤクザ業界への高い就職率を誇るらしい喧嘩バカのエリートが集まる《鬼邪高校》、パルクールでクルクルとスラム街を駆けまわる守護神《RUDE BOYS》、祭りがあれば何でもいいテキ屋のお兄ちゃん集団《達磨一家》、という5つ)が、内部抗争やMIGHTY WARRIORSとの激しい闘いを経て、ひとつにまとまっていく

・雨宮兄弟の長男坊である斎藤工が、やくざと政治家の癒着を暴くためになんやかんや頑張ってUSBを残す

・SWORDで唯一マトモにお金を稼いでるWhite Rascalsが刑務所から出てきた中村蒼とぶつかり合う。なんやかんやまたSWORDが結束する。

・上の抗争と並行して、斎藤工が残してったUSBを公表しようと、琥珀さん(AKIRA)と相方の九十九、そして雨宮ブラザーズが因縁を乗り越え、USBを執拗に狙う日本刀携帯式ヤクザ型ターミネーター源治(小林直己)率いるヤクザ軍団と、(ただのバイク乗りに過ぎない4人なのに)決死の攻防を繰り広げ、何とかミッション達成

・とうとう津川雅彦岩城滉一といった「アウトレイジに出てそうで出てない俳優陣」が顔首揃える九龍グループがシビレを切らし、「ヤクザじゃけえ、何してもええんじゃ」と、血気盛んなお兄ちゃんを痛めつけるべく、ようやく本気を出す。

 

まともに一からストーリーを追いかけると、重度の頭痛を引き起こしそうな時系列の煩雑さなので、色々省略しましたが、気になったらDVDなりHuluなりで見ていただいて、上のテキトー極まりない説明書きが、決して的外れではないと、確かめてもらえれば幸いです。

 

上のような紆余曲折を経て、山王連合会の総長であるコブラ(岩田剛典)が九龍グループの一角である善信会の会長(岸谷五郎)にマンツーマンで宣戦布告したことがキッカケで、いよいよ《SWORD連合vs最大ヤクザ勢力》or《大人vs若者》という戦争が始まるんですね。一時ある女優さんが被ってしまった、大手事務所とのもめ事を想起せずにはいられませんが、この構図は芸能界の縮図みたいなモンじゃないのではないでしょうか。『アウトレイジ』もそういう感じでした。怒ったヤクザのおじさん達が、各地区に侵攻していき、文字通り蹂躙していく様は、ディストピア映画のようです。コブラちゃんも、ヤクザのトップにケンカ売ったもんだから、決死のゲリラ戦もむなしく、屈強なおじさんにあっけなく捕獲され、黒ゴマスムージー生コンクリートを飲まされる激しい拷問を受けます。しかも、ディストピア映画さながらの残虐非道なヤクザ・ムーブメントはとどまることを知らず、「無名街爆破セレモニー」なる素面では到底思いつかぬ、トチ狂ったスラム街爆破計画を敢行するのです。一方その頃、SWORD連合とは別行動を取っていた琥珀&雨宮は、刑事である西郷の手引きにより九龍グループとの決着をつけるある証拠を守るために、奔走しています。はたしてとらわれたコブラは、無名街は、その他の兄ちゃんたちの運命はいかに。ジャンジャカジャン。

 

ここまで書いて、脚本家は本当にシャブを打ってないのか検査するべきではないかという気がしてきたのですが、こういった正気とは思えないプロットを、バチバチのアクションに、キレキレのキャラ立ち、ゴリゴリのセット、キメキメのドラッグ感の掛け算で、圧倒的な熱量と不可思議な説得力を持たせてくれるところが、このシリーズの醍醐味なんですね。

 

こうなると、やはりここでこの『最終章』に期待するモノといえば、手の届かぬところで蠢いていた巨悪が、小さき者たちの勇気ある行動によって、一般市民に告発され、壊滅に追い込まれていく。という筋書が予想できます。

 

で、実際にそうなっていきます。これまでドラマシリーズから散々撒きに撒いていておいて、あとで拾い集める気なんてサラサラないように思われていた、細かい「ああ、そういえば謎の鉱石とかあったなあ」という諸々の設定を一本の中心線に集約させ、《大人vs若者》の一大戦争がクライマックスへうねりを上げていくのは、シリーズを見ていたものからすれば、それなりに感涙モノです。

 

しかし、やはりどうしても随所でこのシリーズが本来持っていた、大きな弱みが、白日の下にさらされてしまったような気分で、なんだかちょっと見ていられず途中ハット我に帰ってしまう瞬間もあったし、そのハット我に帰っている冷静さにまた悲しくなってしまった部分も大きかったのも事実でした。

 

というのも、このシリーズは先ほどのように、この「記号」が飽和状態を超えた先にある、クライマックス感が売りだったのですが、『2』の振り切ったアクション娯楽はどこへやら、ウェットすぎるんですね。まあ、こういう辛気臭いお話、酒の肴にはなるんでしょうが、自分はまっぴらごめんだな、という若干危惧していたような仕上がりになっていました。第九に乗せた、あのバトルロワイヤルさながらの予告編の通り、「お祭り」のまま終わらせてほしかったのが、正直なところ。元々、異常なフィジカルの情報量とEXILE的な野郎BGMがドカッと押し寄せてくる、あの高揚感が気持ちよかったのに、アクションシーンがあまりにアッサリ(普通の映画なら「すごい」と形容されるレベルではあるのですが、ここまでハードルを上げ過ぎていたがために、制作期間の短さによるやっつけ感が目立ってしまいました)していたのも悲しかったです。そのせいで、ずっと誤魔化せてきた、粗っぽいストーリー・テリングが前面に押し出されて、空虚すぎるスッカラカン度合い。古今東西あらゆるサブカルチャーから拝借したモチーフが、ひとつの群像劇として動くから面白く、自分でその情報から「萌え」ることができるものを選び取る喜びがあったはずなのですが、不必要にヤクザサイドに肩入れしたりするもんだから、物語の主軸がまるで定まらず宙ぶらりんなまま迎える、この『FINAL MISSION』でのラストの(一応は感動的な)展開には非常に萎えてしまうのですね。

結局、こんなのは「自分がHiGH&LOWシリーズにどのような愉しみを求めていたか」に終始してしまうわけですが、やはりガッカリしてしまいました。

 

前述のように、とても素面で書いたとは思えぬプロットなので、ここに更にツッコミを細かに入れるのは野暮ですし、やめるべきなのですが、どうしても看過できなかった箇所をいくつか

・『2』から新登場した、どう考えてもこれを活かさない手はないであろう、強烈なヴィラン・源治とのアクションが、時間の制約があったとはいえ、簡略化されすぎてしまったのは惜しい。AKIRA&青柳&&TAKAHIRO&登坂が、ヤクザノ追ってから逃げ回る、狭い廃ビル(?)を縦横無尽に駆け巡るアクションと、それを追うカメラには度肝抜かれたのですが、ターミネーター小林直己のやられ方は、あまりにあっけない。どうでもいい会話を挿んだ意図が見えない。

・そもそもこのお話、中心にあるのは「若者の群像劇」なのに、いつの間にか老いぼれ共がメインになり、津川雅彦に至っては、悪の元凶なのに、いきなりめちゃくちゃぬるいことを言い出す始末。極悪非道を尽くす割にいちいち言うことが手ぬるいのはどうなんですかあんだけバカげたセレモニーを画策しといて、バイキンマンよりもあっさり引き下がるのは、ちょっと情けなくないか。コブラもせっかく抵抗を訴え、不屈の精神で退ける場面なのに、カッコよく見えないです。

・悪行を尽くしてきた二階堂やキリンジは、このシリーズ内のどこかで、大きなしっぺ返しを食らわないといけないはずなのですが、どうも釈然としない。

・多忙なスケジュールでどうにかあったわずかなスケジュールの中、窪田正孝の最期を撮影したのは理解できるが、一瞬にしてヤクザにやられてしまって、気づいたらお墓(『LOGAN』オマージュと呼ぶにはあまりにまんま過ぎるパクリ感すら出てしまうぞんざいさ)の中なので、消化不良。せめて、スモーキー窪田が最後に必死の抵抗を見せた証拠として、例えばリンチにかけたはずのヤクザが顔にアザだらけだったとか、二階堂が悔しそうな表情を見せるカットを挿むとか、くだらない語りを入れるなら、せめて重大キャラの弔いとして、それぐらいの配慮は欲しかった。

・爆弾の線のどの色を切るか、という最近はすっかり王道すぎて見なくなった展開を入れるのは構わないが、あんだけ迷った挙句に、どの線も切らなかった→爆破→ポカン、という体たらくで、ひょっこり山王連合会に帰ってきたダンや九十九は何の貢献もしていない。

・いくらなんでもセリフが抽象的すぎて、斉藤洋介と子役の訴えも薄い。

・戦力は作中一あるし、目的はどの集団よりも明白(音楽とクラブ)なはずなのに、いまひとつ何がしたいのか意味が解らなかったMIGHTY WARRIORS

・いくら続編ありきとはいえ、一応最終章を銘打っているので、よくわからないバルジ(ずっと『2』で「主がお呼びだ」とジェシー(NAOTO)が言われてると勘違いしてたんですが、まさか薬草みたいな名前だったとは)をしつこく強調して存在を臭わせすぎたのは、興醒め。

 

 

要は、「少年期からいかに現実との折り合いを付けるか」がテーマとしてあったはずですが、そこがおざなりにされてしまっているように見て取れましたし、このまま続編に繋げる医師がプンプン匂ってしまったので、やはり、きちんとこのSWORDの歴史には一旦のケジメをつけてほしかったです。

 

結構厳しめなことを言っておいてなんですが、、どう考えても、この対策を終わらせるには短い、異常なスパンで製作されていた中で、ここまでの物を作り上げようという意思は大いに買いたいですし、ヒロさん並びに制作陣の方々には、ゆっくり休んで、英気を養っていただきたいものです(アベンジャーズ壊滅の続編を1年も待たされる苦行に比べれば、この大作の異常なまでのスパンの短さは驚異的ですよホンマ)。

 

 

とりあえずおしまい