ふしぎなwitchcraft

評論はしないです。雑談。与太話。たびたび脱線するごくごく個人的なこと。

ブライアン・デ・パルマ『ミッション:インポッシブル』

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ちょうどテレビでやることを知ったので(NHKなのでCMもないし)、録画したその日の晩に観賞。水槽のところで「あーガムやるな」とか「このあとトムが吊るされるんだ」とか、予測がついても無類に面白いもの。

ブライアン・デ・パルマの映画はどれも良いものばかり。『スカーフェイス』『アンタッチャブル』『キャリー』と挙げだすと全フィルモグラフィを挙げてしまいそうになります。中でも、意識し始めて(さすがに『ミッション:インポッシブル』を最初に見たときには誰が監督だなんて気にもしていない)はじめて見た作品である『ミッドナイトクロス』には、心の底から惚れ込みサスペンスの豊穣な魅力に虜になってしまった。

この人の映画、なんといっても映像がやたらに贅沢(華美なセットや俳優陣でごまかさずに) で、映画がフィルムであった時代の質感を味わえるような気がするのがいい。トリッキーではあるが真面目で、堅実でクラシカル。この人、本当にヒッチコックの『北北西に進路を取れ』が好きなんでしょうね。カメラと被写体の距離感が独特で、これだけでサスペンスを生むのですから大したものです。腹の探り合いが面白く、どの登場人物もイキイキとしているのが、よろしい。

有名なCIA潜入シーンやレストランでのにらみ合いなど、どこも好きな場面でありますが、オープニングが粋ですよね。テレビを食い入るように見る男と、画面の中では尋問が行われており、ベッドの上では女が臥せている*1。尋問を受けていた男が吐くと同時に、テレビの前の男が何かコンピューターに入力し、その後ろではコップの水に怪しげな薬品を入れている。再びテレビの中に戻ると、部屋の中に給仕が現れ、水を飲むと拘束されていた男は倒れ、尋問していた男がドアを破ってテレビの横に現れマスクを脱ぐと、イーサン・ハント(トム・クルーズ)の顔があらわになる。ここでここまでが一連の芝居だとわかり、イーサンはベッドに向かう。純白なシーツには黒いドレスをかろうじて着ているぐらいに肌を際どく露出した女が横たわり、真紅の血がはだけた胸元に滴る。舌ったらずなフランスなまりの英語が艶かしいエマニュエル・べアールが首尾を尋ねると、イーサンが「We got it.」と答え、そこで導火線に火が付き、お馴染みのあのテーマソング。完璧である。ここでもう身を委ねて良いなと、一気に引き込まれ、腰かけたソファーに浮かせた背をまたゆったり任せてしまう。「何が起こってるのかいまいちよくわかんないけどオシャレやん」感。上質。

以下は、この映画で決定づけられた自分にとっての『M:I』seriesにおける評価基準。

  • イーサンの個人プレイだけでなくチーム戦の旨みを活かしたサスペンス
  • 敵対する複数のチームとの罠の張りめぐらし合い
  • イーサン・ハントと女のロマンティックになりすぎない関係性
  • 往年のスパイアクションのようなマヌケなガジェット類(変装マスクとかカメラ内蔵のメガネとか、コナン君が好きな少年だったので普通に興奮してみていた記憶)
  • たとえ敵側がザルである等ツッコミがあっても、プロットをこねくり回そうという気持ち(?)
  • ここから始まった、ジャッキーに憧れるトムが身体の限界に挑み続ける企画は、どこまで到達するのか
  • 戸田奈津子の英語力・翻訳力は上がったのか

などなど。

御託は色々並べましたけれども、「この頃はまだ人間だったんだよな」とトムの人間としての面影があった時期を懐かしみ、ジョン・ウーの功罪*2に思いを巡らせたりして楽しんでしまいました。

この映画の欠点といえばやはり戸田センセイの字幕が96年作とは思えぬほど古臭いことくらいなのでしょうか。最近はいじられるほど派手でヘンテコな訳(マシになっただけで『フォールアウト』でもご健在ではありました)をしなくなったので、ちょっとつまんなくなり、せいぜい「トムのスタンド(幽波紋)の婆さんだ」とネタにするくらい。

上にいくつかの今シリーズの自己評価軸を並べましたが、何より素晴らしいのは、トム・クルーズの健全さだと思います。どれだけリアル指向になっても、この人がニカッと微笑めば大抵の失態でも許されてしまうような魔力がある。

あと、デ・パルマのドキュメンタリー見ていなかったような、あれ見てたかしら、とかわかんなくなったのでTSUTAYA行こうかと思います。

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<おしまい> 

*1:ここでヒッチコック好きは興奮し、『ミッドナイト・クロス』ファンは最初にニヤリとする

*2:結果オーライだし何気に大好きだけど、だって、この次に本編と関係ないロッククライミングやるなんて、だれも予想しないじゃないですか