ふしぎなwitchcraft

評論はしないです。ただ流れる言葉。雑談。意味のない話。つまらない話。聞くに値しない話。たびたび脱線するごくごく個人的な話。

果たしてキルモンガーを克服できただろうか? 『ブラックパンサー』

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『シビル・ウォー』でのあまりのクールさにシビれてしまったので、予告編で見たこの場面で期待値グングン上昇したモノですが、今となっては「ヘタレやのになんでちょっとイキってんねん」というワカンダ国民以上に支持率ガタ落ちのティ・チャラさん。アベンジャーズではリーダーシップを発揮して、あの頭の固い社長を懐柔してほしいもんでございます。

(今記事を読んでくださる希少な物好きの方にはせっかく読もうとしてくださるタイミングで、申し訳ないのですが、いわゆる「ネタバレ」に触れておりますゆえ、そういったものを忌避しておられるなら、お読みになる前に是非とも『ブラックパンサー』本編をご覧いただくことを推奨させていただきます) 

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あまりに大好評なので(まあ一回目はカッコいいガジェットやスーツに目を奪われ友人と「ワカンダフォーエヴァーッ!!!」とワーキャー言っていたので偉そうなことは言えん)、不満を抱いている私がいけないのかしら、と世相での評判の良さとのギャップで苦しみつつ、考え直した結果、やっぱり俺間違ってねえよな、という結論に。

ただ、一つ添えておきたいのは、今作がここまで「売れて」いるということについては、何の違和感もないということ。だってこのR&Bやヒップホップがありとあらゆるジャンルを食い、ロック衰退説までまことしやかにささやかれている(?)このご時世に、メインキャストがほぼ黒人で、ここまでポリティカルにコレクトな黒人像を打ち出し、それをヒーロー映画と掛け合わせてしまうわけだから、当然「バズる」に決まっているのである。自分も愛聴しているが、サントラに集まったアーティスト()の豪華絢爛さは口から涎が出るレベル。そこに『マッドマックス 怒りのデスロード』のような、見る者を鼓舞するカルト性もスパイスとして加わっており、民族衣装は美しく、まだ見ぬ第3の故郷への郷愁にかられる。

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自在に着たり脱いだりができる特撮的なギミックや衝撃を反撃用のパワーに変換する機能は気に入ったのですが、やっぱ新スーツのデザインがイマイチだったかなぁ

だが、やはり2度目以降、そうしたヒット要因から遠ざかって、映画を眺め直したときに、歴史的な娯楽大作であるものの、実に平板でどこにでもあるお話にしか映らないのも事実なのである。

マーベルのヒーローもののみならず、大概の一作目で主人公に立ちふさがるヴィランというものは、主人公にとって鏡像のような存在で、そこに自分を映すことで見つめ直し、精神的に成長していく、というのが大筋で、『アイアンマン』や『キャプテン・アメリカ』も踏襲してきた。こうした物語では、必ず、この鏡像を克服することでステップアップするのが一番のルールである。しかし、ティ・チャラはキルモンガーを打ち克つことができたのか、正直明白に描き切れていなかったように思う。自分のリテラシー不足もあるのかもしれないので申し訳ないのだが、希薄な印象が強い。結局、戦いを収めるできたのも、白ゴリラの加勢のおかげであって、ブラックパンサー=ティ・チャラ自身の闘いへの貢献度は極めて少ない。せいぜいキルモンガーと列車でチョコマカやっていただけで、あれでは勝利できたのはラッキーパンチでしたテヘペロ☆と舌を出されても、そりゃそうだ、という話なのだ。

大体、初出の『シビル・ウォー』で、あれほど威厳と哀しみを同時に抱え絶大なカリスマ性を誇って、復讐の輪廻を絶った男なのに、劇中で時間がさして経過していないのにもかかわらず、おそろしくナヨナヨしたよくいる少年ジャンプ主人公的なメンタルになっており、ギャップがありすぎる。自分の父親がとんでもないことを過去にしでかしていたショックは計り知れないが、だからって彼女に泣きつく、そんな情けないティ・チャラ王は見とうなかった。キルモンガーとの対比にしても、ここまで豆腐メンタルにしなくてよかったはずなのだ。だって豆腐メンタルのヒーローはもうさんざんやってきたではないか。等身大も大いに結構だが、成熟した一国の主が、先王の残した負の遺産に苦しみ、理想と野望を抱えた自分の化身に立ち向かう、というプロットで十分に成り立つはずなのだ。『スター・ウォーズ』もだが、なんでも「どこにでもいる僕ら」系にしすぎではないか?

CGが粗すぎるのも気になる。確かにワカンダの未来都市と広大な自然が融合した世界は、とても綺麗だ。しかし、どうしても「嘘くささ」のようなものが鼻につく。原作コミックをあまり詳しく知らないので、どこまでが忠実なのかわからないが、やはりアメリカに住む黒人が抱く理想郷アフリカという印象が強いのである。いうなれば、欧米人が良くやる富士山やサムライや忍者がゴチャゴチャに拡販された架空国家JAPAN的な装い。このコテコテな理想郷に潜む違和感は、初めて『ALWAYS 三丁目の夕日』の似非「古き良き昭和の日本」というファンタジーが放つ「嘘くささ」に繋がる。

MCU時系列的にも、これだけ内戦がボコボコ起きているのに、あのキャプテン・アメリカが一切関知していないのが不自然に思える。もちろん『シビル・ウォー』でキャップを捕まえる側にいたマーティン・フリーマンのCIA捜査官がいるので隠れていた、という説明はつくのだが、それでもいったん死に掛けワカンダには恩義があるワケだし、あれだけの規模の非常時が起きているのなら、キャプテン・アメリカが共闘という形で未熟な王であるティ・チャラの人生の先輩メンターとして登場させれば、話運びがスマートになったと思うのである。

最後の宣言もマヌケですらある。国のために動いてたのは、結局キルモンガーのみで、他はそれぞれ過去の因習にとらわれてがんじがらめになっているようだった。

だから、結局ティ・チャラは戦いにこそ(なんとなく)勝ちはしたものの、キルモンガーを克服できてはいないし、その影が『インフィニティ・ウォー』以降で付きまとい続けるのなら、次回作ではきちんと描き切ってもらいたい。

少々、不満が多いような書き方だったが、バックグラウンドを省いた映画としての薄さはともかく、それでも見て損はない意義深い一本ではある。たとえここにあるものが表層的で記号的なものに過ぎなくとも、すさまじい影響力を持っているのは事実で、現実を変えようとしているわけだから、いずれ「ブラックパンサー以前/以降」なんて語られ方もされるだろうしね。

ただやっぱり「キルモンガーの掲げる理想はわかるけどもワシはそれは倫理的に許せんのじゃ………」と正義を貫くのはいいものの、味方のCIAは敵機バンバン撃ち落としまくって、人乗ってたらどないすんねん、とか考えちゃったり、そこでまたあやふややな賛否どっちとも言い難い感じになるのだが、あくまでこの映画は「平凡な映画」であることがミソのようである。

あと、サントラはマジ最高なんで…………ここは強調しときます(ケンドリック・ラマーとSZAのコーチェラでのコラボはブチ上げモンでございました)

とりあえずライアン・クーグラー監督『クリード』を近いうちに見返しますよ

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Black Panther

Black Panther

  • ケンドリック・ラマー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

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2018年の大事件&大珍事である女王ビヨンセによるコーチェラならぬBチェラパフォーマンス。これこそまさしく『ブラックパンサー』的でしたし、ビヨンセは時折キルモンガーにも見えました。

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マイケル・B・ジョーダンが『クリード』以上に仕上がりまくっていて、惚れ惚れ致しました。マジ抱いてほしい。ただあのブツブツはね…………

 

 おしまい