ふしぎなwitchcraft

評論はしないです。ただ流れる言葉。雑談。意味のない話。つまらない話。聞くに値しない話。たびたび脱線するごくごく個人的な話。

アジズ・アンサリ『マスター・オブ・ゼロ』(イントロ)

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見終わってしばらく、「このドラマ以外のドラマをもう愛することができないかもしれない」と思わせた経験があるだろうか。自分にとっては、『マスター・オブ・ゼロ』がそんな作品である。

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掬っても掬ってもこぼれる人生の砂粒

人生は選択の連続である。あまりに当たり前のことだが、厳然たる事実である。ありとあらゆる面で選択肢が増えた、現代社会では尚のこと。食べログなんかがわかりやすい。おいしい焼肉屋に行こう、とあなたは思い立つ。すると、まず、何をするだろう。とりあえず当てもなくぶらつく?道行く人に尋ねまわる?そんな古典的な事をする方は、ごく稀であろう。おそらく、ネットが発展した現代において、多くの人がここで取る行動は、手持ちのスマートフォンで「焼肉_おいしい」「焼肉屋_大阪」といった具合に、Google等で検索をかけるのではないだろうか。ネット検索の次は、お店選びだ。ここでも、さらに難問が立ちはだかる。なんとスマートフォンの画面には、沢山の「オススメ」が登場するわけだ。さて、困った。2つや3つなら、候補が限られているので、迷いも少ないだろうが、ここでまた選択を迫られる。そして、星の数なんてのを基準にするのではないだろうか。自分なら、食べログなら3.5以上はまずまず美味しい、という基準を設けていたりする。お店も決まった。場所もわかった。あなたはそこへ向かう。しかし、いざお店に付くと、なんとお店は閉まっているではないか。もう一度スマートフォンの画面を見返すと、「月曜日はお休みです」と書かれている。ああ、なんてことだ、と狼狽えながら、仕方なく手当たり次第最寄りのお店を探し、ようやく焼肉にありつける、という感じ。あの優柔不断な時間はなんだったのか。実に徒労である。しかし、選択肢が無限にある限り、選択肢を狭めよう、という楽を選びたいのは人間の性である。煩わしいこと、この上ない話だ。なお、これは自分の実体験である(笑) 

 

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さて、前置きばかりが長くなってしまったが、大まかにいえば『マスター・オブ・ゼロ』も、そんな多種多様な選択と選択することで失われる時間、と多様性そのものが持つ豊かさを描いた物語である。物語の主人公となるのは、役者のデフ。仕事に特に困っているわけでもなく、職を選んだキッカケも、街を歩いていたときのスカウトで、 イマイチ情熱を傾けられていない。可愛い彼女もいて、不満などないが、結婚や子供ができることを恐れている。"Jack of all trades is a master of none."という諺の通りで、多芸は無芸、何かに劣っているわけでも勝っているわけでもない。そんな何も極めていないミレニアム世代の大人が主役となり、そこに行き来する日常の悲喜こもごもを描いている(上の、坂元裕二フォロワーなのでは、というやり取りはニヤついた)。

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 今回はあくまで導入編なので、シリーズをひとつずつフォーカスするのは、後にするとして、とりあえず視聴を始めるなら、シーズン2のエピソード8「サンクスギビニング」からをオススメする。「ニューヨーク、アイラブユー」も傑作と呼ぶに値するだろうし、フランチェスカとの恋模様に苦しむデフも実にグサグサと胸に刺さる内容で、そちらもご覧になっていただきたいのだが、それらもまた追々。

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「つまみ食い」上等のドラマなので、全く躊躇する理由がないです。是非とも。